創業者の心石務睦は、7人兄弟の長男として生まれました。戦後の厳しい環境の中で家族たちを食べさせるために、高等教育も受けられず様々な仕事をしてきました。その中で、最も大切な事は「信頼されること」であると考えるようになりました。
私が手伝い始めた頃、一番ひどく叱られたのは、段取りミスで支払いを一日遅らせてしまったことでした。たった一日くらい大丈夫と軽く考えていた私でしたが「すべての支払い先に連絡をして了解を取れ!」と、すごい剣幕で叱られました。信頼を築くのは難しく、崩れるのはあっという間。仕事が信頼関係で成り立っているということをたたき込まれました。
仕事には厳しい人でしたが、社員さんを家族のように大切に思う人でもありました。プライベートな事でも親身に相談に乗り、働き続けることができるように手助けをしていました。家族のような関係で、一緒に努力することを大切にしてきました。
創業してしばらくは応接セットが流行し、作れば売れる時代でした。しかしバブル経済崩壊後、取引先の問屋さんが次々と廃業し、安価な輸入品が流入し始めた時期には、真剣に廃業を考えました。そんな苦しい時に周りにいる人たちが助けてくれて、何とか新しい仕事を得て継続することができました。その時の「頑張っとったら、誰かが見てくれとる。」そう嬉しそうに話す父の顔が今も思い出されます。
ソファを作って買ってもらう。そこにはいつも信頼関係がありました。良い時もあれば苦しい時もある。こうして積み重ねてきた50年を振り返り、支えてくれている皆さんに感謝を伝えるためにこの冊子にまとめました。
ご一読いただければ幸いです。
創業当時、工場は心石会長の自宅の隣にありました。少しずつソファも売れ始めて、会社の規模も大きくなったころ、木工団地の土地を購入し、1987年に工場(現在の本社)を建設しました。
創業後12年目の1980年にはショールームを構えて販売を始めました。しかし、製造と販売との両立は難しく、倉庫や商品の撮影スタジオとして使われるようになりました。
心石工芸の歴史は、どのように始まり、高い技術力はどのように磨かれてたのでしょうか。久しぶりに顔を合わせた創業当時の職人たちは、とても賑やかにそれぞれの思い出を話してくれました。
ZUIUN 代表取締役社長 正理さん
リアルスタイル 代表取締役社長 鶴田さん
丸庄 代表取締役 酒見さん
アカセ木工 取締役 後藤さん